警察犬と聞くと日本ではジャーマン・シェパードを思い浮かべる方が多いと思います。海外に目を向けると世界には国や任務によって多種多様な犬種が警察犬として活躍しています。本記事では、世界で活躍する警察犬の犬種を紹介します。もちろん、日本で活躍している犬種についても紹介します。
世界の警察犬とは?その役割と必要な資質
警察犬は捜査やパトロール、爆発物探知や麻薬探知、人命救助などさまざまな任務を遂行します。
そのため、犬種ごとの特性に応じて任務が割り当てられます。
- 鋭い嗅覚:麻薬・爆発物の探知に不可欠
- 高い知能:訓練を素早く理解し実行できる
- 俊敏性と体力:追跡や障害物克服に重要
- 安定した性格:状況に動じず冷静に行動する
世界の警察犬種別ガイド【国・犬種・目的・補足一覧】
以下の表は、各国で実際に警察犬として活躍している犬種を調べました。一覧にして任務や特徴を見やすくまとめたものです。
国名 | 警察犬種 | 任務・目的 | 補足説明 |
---|---|---|---|
アメリカ | ジャーマン・シェパード、ベルジアン・マリノア、ラブラドール・レトリバー、ブラッドハウンド、ビーグル | パトロール、探知、追跡、人命救助 | 州や部門によって複数種を使い分けている |
イギリス | イングリッシュ・スプリンガー・スパニエル、ベルジアン・マリノア、ラブラドール・レトリバー、ジャーマン・シェパード | 爆発物・麻薬探知、パトロール、公共警備 | 空港や鉄道などでも活躍 |
ドイツ | ベルジアン・マリノア、ジャーマン・シェパード、ラブラドール・レトリバー | 犯罪者追跡、麻薬探知、治安維持 | 犬の繁殖・訓練施設も国家主導で整備されている |
フランス | ブラッドハウンド、ベルジアン・マリノア、ボクサー | 行方不明者捜索、治安警備 | 長距離追跡にはブラッドハウンドが多く使われる |
カナダ | ラブラドール・レトリバー、ジャーマン・シェパード、ベルジアン・マリノア、ニューファンドランド | 爆発物・麻薬探知、水難救助、追跡 | 山岳・水難救助用にニューファンドランドを使用 |
ロシア | ロットワイラー、ジャーマン・シェパード、コーカシアン・シェパード | 犯罪制圧、国境警備、対テロ作戦 | 大型で防御力に優れる犬が多く採用される |
オーストラリア | オーストラリアン・ケルピー、ラブラドール・レトリバー、ベルジアン・マリノア | パトロール、探知、人命救助 | 広大な農村や山地での活動に適した犬が多い |
中国 | 昆明犬(クンミンドッグ)、ジャーマン・シェパード、ベルジアン・マリノア | 多目的警備、治安維持、テロ対策 | 軍・警察ともに独自犬種「昆明犬」を重用 |
スウェーデン | ジャーマン・シェパード、ベルジアン・マリノア | 爆発物・麻薬探知、警備 | 国土に合わせた耐寒性犬種が多く活躍 |
その他の国で活躍する警察犬たち
以下は上記の国以外で警察犬として活躍している犬種とその任務・特徴を表にまとめたものです。
国ごとに、選ばれる犬種の特性(暑い国、寒い国など)も選ばれる傾向があるようです。
インドは高温多湿の気候でも耐性が強い、ブラジルではマスティフ(マスチフ)も活躍しているのは驚きです。どの国をとっても、大型犬が主に活躍しているようですね。
国名 | 警察犬種 | 任務・目的 | 補足説明 |
インド | ラブラドール・レトリバー、ドーベルマン、ジャーマン・シェパード | 爆発物・麻薬探知、暴動制御、警備 | 高温多湿な気候に耐える犬種が選ばれる |
ブラジル | ジャーマン・シェパード、ブラジリアン・マスティフ、ベルジアン・マリノア | 犯罪者追跡、麻薬探知、スラム街警備 | 犯罪率の高い都市部での使用に適した犬が選定される |
韓国 | ジャーマン・シェパード、ベルジアン・マリノア、ラブラドール・レトリバー | パトロール、麻薬探知、公共施設警備 | 空港や地下鉄など都市インフラでの活動が多い |
ノルウェー | ジャーマン・シェパード、ベルジアン・マリノア | 犯罪制圧、麻薬探知 | 寒冷地対応の被毛を持つ犬が好まれる |
南アフリカ | ジャーマン・シェパード、ブラッドハウンド、ラブラドール | 密輸品探知、追跡、空港警備 | 国境警備や密輸摘発に力を入れている |
日本の警察犬|採用されている7つの犬種と特徴
日本においては、警察犬として以下の7つの犬種が「警察犬協会」の指定犬種として登録されて活躍しています。
■ 主な犬種と用途
- ジャーマン・シェパード
- 任務:追跡、犯人制圧、警備全般
- 特徴:知能が高く、国内最多の登録数を誇る警察犬
- ラブラドール・レトリバー
- 任務:麻薬・爆発物探知
- 特徴:温厚な性格で人混みの中でも冷静に行動できる
- ゴールデン・レトリバー
- 任務:人命救助、行方不明者捜索
- 特徴:従順で感情豊か、人と接する任務に向いている
- ドーベルマン
- 任務:警戒警備、犯人制圧
- 特徴:俊敏で威圧感のある外見が抑止力となる
- コリー
- 任務:追跡、人命救助
- 特徴:優れた嗅覚と俊敏性を持ち、特に山岳救助や捜索任務で活躍
- ボクサー
- 任務:警戒警備、犯人制圧
- 特徴:筋肉質で反応が素早く、警察犬としても長い使用歴がある
- エアデール・テリア
- 任務:人命救助、パトロール
- 特徴:テリア系最大種で、知能と独立心があり、冷静な行動が求められる場面で活躍
日本では、都道府県ごとに警察犬の訓練所や嘱託制度があり、民間の訓練士が育てた犬が警察犬として登録されるケースもあります。
日本の警察犬については別記事でさらに詳しく紹介するので読んでみてください。
あなたの飼っている犬種も、警察犬になれる素質が備わっているかもしれませんよ。
警察犬に向いている犬種の特徴とは?
どの国でも警察犬として採用される犬には共通した資質があります。
- 高い学習能力:複雑な命令を理解し、忠実に遂行できる
- 強い忠誠心:ハンドラーとの信頼関係を築ける
- 適度な攻撃性と制御性:必要な場面で行動できるが、暴走しない
- 優れた嗅覚と聴覚:匂いや音に対する感度が高い
警察犬になるための訓練と警察犬としての現役期間
警察犬は通常、生後6か月〜1歳ごろから訓練が始まります。訓練は長期間に及び任務に応じた特化訓練も行われます。現役として活動できる期間は、一般的に8〜10歳程度までとされており、その後は引退し家庭犬として過ごす場合が多いです。
まとめ|多様な警察犬の世界は実に興味深い
警察犬は、国や文化、地理的条件によって使用される犬種も任務もさまざまです。しかし共通しているのは、人間社会の安全を守るために献身的に働いているという点です。日本だけでなく、世界の警察犬たちにも目を向けることで、より深い理解と関心を持てるのではないでしょうか。家庭犬だけではなく、目的をもって
今後は、警察犬の引退後のケアや、災害救助犬との連携なども注目すべきトピックです。あなたも、街で見かけた警察犬に感謝の気持ちを持ってみてはいかがでしょうか。
出典
- 各国警察・軍用犬関連機関の公式発表(例: FBI K-9 Unit, Metropolitan Police UK, Bundespolizei Germany など)
- National Police Dog Foundation(アメリカ)
- The Kennel Club(イギリス)
- Fédération Cynologique Internationale(国際畜犬連盟)
- 各国メディア報道・警察庁リリース・公的統計資料